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未来の子どもに残すもの

日本の建築物や住宅は建築基準法という法律に基づき安全に建てられています。建築基準法は昭和25年にできてから幾度かの改正を経て、現在建てられる住宅は世界的に見ても精度が高く、また地震などに対してもそこに住む人々の生命、財産そして安全を守り、安心して生活できる空間を提供してくれています。建築期間も昔に比べ短くて3ヶ月ぐらいで家は完成します。安心、快適な生活を守ってくれる現在の住宅は魅力的です。昨今は地球環境の保全のため地球温暖化対策や記憶に新しい2011年の東北大震災以後の電力危機問題などと合わせて省エネルギーの為に気密性を高めたり、太陽光発電などの普及によるスマートハウスなどと呼ばれる住宅が脚光を浴び、スマートハウスなどは従来の住宅メーカーではなく家電量販店などが販売を始めています。

この本では、国の登録有形文化財制度に合わせて建てられてから50年以上経った建物で骨組みに木材を使用した伝統構法と呼ばれる建築構法や在来構法と呼ばれる建築基準法制定後に一般的に建てられる木造住宅で50年経過したものを古民家としています。

木造住宅でもアメリカから輸入されたツーバィフォー住宅は日本の住宅の考え方である柱や梁といった骨組みで形を作る方法とは異なり、壁を組み立てて行く構法なので古民家の枠組みには入れておりません。

また骨組みがコンクリートや鉄で出来たもの、大手ハウスメーカーなどが建築している工場でユニットとして完成させたものを現地で組み立てるプレハブ構法の住宅も古民家の定義からは外させて頂いています。

ですから今後古民家という表現があれば、それは伝統構法並びに在来構法と呼ばれる木造軸組構法で建築されてから50年以上経過した建物と理解してお読み頂きたいと思います。

その中には昭和の時代に建てられた比較的新しいものもあれば、明治時代、あるいは江戸時代に建てられたような時代劇に出てきそうな住まいもあります。

そこでまず、明治や江戸時代に建てられた古民家について書いていきます。

このような古い住宅の特徴は土間と呼ばれる家の中にある地面と同じ土の床のスペースにとおくどさんなどと呼ばれる調理をする為のカマドがあったり、囲炉裏(いろり)と呼ばれる家族が食事をしたり、冬場暖をとる為のスペースがあります。さすがに今は囲炉裏や土間を利用して生活している家というのは無くなってきたかと思いますが、それでも昔ながらのそういったものが残されている古民家に出会う事は少なくありません。

しかしこのような古い住宅に住まわれている方にお話をお聞きすると、残念な事ですがもうこのような家には「住みたくない」と言われます。

なぜなら、

古民家は 

1、寒くて

2、室内が暗くて 

3、現在の生活スタイルにはそぐわない使い勝手の悪い住居なのです。

100年、200年前は当たり前だった土間での調理はいまでは逆に家電をく場所も無く不便ですし、木製建具の気密性の無さから吹き込む隙間風は冬場寒いのです。日の光が入りにくい構造は昼でも電気をつけないと室内は暗く何となく気持ちまで落ち込みそうです。

これは古民家は日本の気候風土に合わせて夏の高温多湿の気候を快適にする為に工夫がされた住居であり、冬はその寒さに震えなければならない構造なのです。

しかしこの古民家こそが日本の住文化の基本であり、日本人の考え方の原点でもあったのです。昔の加工技術では柱などの木材は貴重品であり家を建て替える際には何度も使い回されました。そこにはものを大事にする精神がありましたし、開放的な間取りは近隣とのコミュニティを重視しご近所付き合いが活発で地域で子どもの躾や教育などもおこなっていました。また四季折々の伝統的な行事は代々と受け継がれその積み重ねこそが文化となったのです。自然の前には無力だった昔の生活は逆に自然との一体感を生み、八百万の神として回りにあるもの全てに感謝するという日本人の精神性をも育んだと思います。そういう文化を戦後の高度経済成長時代に忘れ、日本の住宅の平均耐用年数が37年という住宅すらも使い捨てのスクラップ&ビルドという流れになったのです。経済が右肩上がりの時代であればそれでも問題は無いかとおもいますが、経済的に成熟し、少子高齢化社会を向かえるこれからは住まい、住宅についても文化的な成熟が必要だと思います。その為にはまず原点として古民家の事を学ぶ必要があるのです。

私が古民家にこだわっているのは不便な生活を強いられる古民家をまたユーザーに住むように押し付けて江戸時代の生活に戻るようなことではなく、古民家に活かされた様々な先人達の知恵を学び、それを現代の生活の中に上手く取り込む事で持続可能な循環型の建築を取り戻すことなのです。私たちには日本古来の技術と文化を未来の子ども達へ引き継ぐ使命があるのです。

具体的には、

古民家の事を学び、そこに活かされた先人達の技や考え方を現代の住宅にも取り入れて活用する。そしてそうする事で、現在日本の住宅の耐用年数の短さを解消し、少なくとも欧米諸国の住宅の平均耐用年数である100年程度は持続可能な住環境をユーザーへ提案していくことで、無駄な資材の浪費を控えて地球温暖化防止にも貢献していくということだと思います。

古民家の良さを上げてみると、

1、古民家に使われている資材は自然素材であり、再活用ができたり、また廃棄しても有害なものを排出する事が無い。

2、古民家の伝統構法は免震的な構造で地震が起こったとしても上手く地震の力を逃がす構造で現在の高層ビルなどにも使われるような日本にあった構法である。

3、地元の資材で建てるという事は地産地消で地域の経済活性化にもなり、また海外などからの無駄な輸送をおこなわないことで無駄な二酸化炭素の排出を抑える事ができる。

4、夏の暑さを和らげる工夫は現在の住宅でも充分知恵として活かす事ができる。

5、外部との一体感を重視した古民家の開放性は回りの自然環境との調和を生みだし、また人の心にも癒しの効果を与える。

6、現在住宅の考え方の基本である個人主義とは違い、家族での団欒を重視する間取りからもう一度家族のあり方などについて学ぶべき点はある。

7、ひとつの部屋で就寝を重複しておこなう古民家は、家の大きさを小さくすることが可能で、コスト面、環境面とも学ぶ事が多い。などでしょうか。

逆に現在のライフスタイルにそぐわないものとしては、

1、お客様中心や現在はおこなわれない家の中での仕事の為の土間などの大きなスペースは無駄となり間取りは使いづらい。

2、家長主義の男性優位の考え方は現在の家族のあり方ではなく男女平等の精神に反している。

3、冬の寒さ、室内の暗さは改善する必要が大きい。などでしょうか。
 
先人の知恵に学ぶべき所は学び、現代のライフスタイルに合わせた提案を行って行く事が大切だと考えています。

Author Profile

川上 幸生
川上 幸生
川上 幸生(かわかみ ゆきお)
1967年1月15日 大阪出身

二級建築士
愛媛県木造住宅耐震技術者
インテリアコーディネーター
照明コンサルタント
住宅断熱施工技術者
下水道責任技術者
古材鑑定士
古民家鑑定士
伝統資財施工士
住宅建築コーディネーター

大阪でお菓子会社にて商品開発やパッケージデザイン、
デパートのショーウィンドウや店舗の設計施工を経て
現在は愛媛に移住して今までの経験を活かし人に優し
い本物の家づくりを目指し「お客様に感動をあたえる
家づくり」を心情に住宅の設計やデザインをメインに
活動中。

主な活動
厚生労働認可財団法人職業技能振興会認定資格 
古民家鑑定士伝統資財施工技術士 教本執筆並びに講師

一般社団法人住まい教育推進協会 会長
株式会社アステティックスジャパン 事業統括本部長
愛媛インテリアコーディネーター協会 会長
四国中古住宅流通活性化協議会 理事
全国古民家再生協会連絡会議 事務局長
ケイズデザイン二級建築士事務所 代表