伝統住宅から住育を学ぶこと

伝統住宅から住育を学ぶこと

最近「食育」ということが言われ、栄養を満たすだけでなく、
何をどのように食べるか、食べ物の背景を知ることが大切だという認識が広がっています。

どこに住むか、どのような家に住むかということも、同じくらい大事です。

昔の家には、すだれ障子、かまど、消しつぼ、がんどう、ねずみ返し、蔵の二重扉など、先人の工夫やたくさんつまっています。
こどもたちの「古民家」を体験してもらうと建物の中でさまざまな発見をします。
古民家の構造、機能、生活の工夫を知り、昔の生活用具を使ってみる。
これは想像力の向上につながり、ひいては創造力、道徳的、科学的能力の向上につながると思います。

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また、伝統木造住宅には、建物を長く使い続けられる工夫がたくさんあったり、
材料をうまく使い回していたりします。
それを発見することで、「もったいない」という心を知り、
それが「ものを大事にしよう」「他者をいつくしむ」という道徳的能力の根源につながります

伝統木造住宅には、季節のきびしさをしのぐ、季節の移ろい楽しむしつらえもたくさんあります。
夏には建具をすだれ障子に変えることで風通しを確保し、見た目にも涼しく過ごしました。
また、縁側を通して庭とつながっている生活空間には、いつも季節感がありました。

英国の宰相であるチャーチルは「人は家をつくり、家は人をつくる」と言いました。
伝統木造住宅は「人をつくる」最高の教室であると私は思います。
現在の住宅は機能的で、無駄が無い、かくれんぼする空間すらありません。
自然と隔絶した、雨露をしのぐだけの箱に住んでいると、自然と融合していた昔の家が不思議に見えるのです。

それでも、住んだことがあるはずもなく、親世代ですら伝統木造住宅に住んでいないのに
「なんか、ここはなつかしい」という子もいます。
やはり、日本人の遺伝子の中にある何かが、伝統木造住宅にはあるんですね。それを子どもたちは感じているのです。

伝統木造住宅の空間には、現代の建物とはちがった、
親しみやすさ、落ち着き、自然との一体になったやすらぎがあります。

住んではいなくても、文化財を訪れ、文化財を活用したイベントなどの機会を利用し、
想像力をはたらかせ、自然と融合する体験を、していただけると思います。

文化伝統木造住宅での文化活動を行うことが、その機会となります。

文化や伝統を大切にすることは過去に向うことではないと思います。
むしろ、豊かな感性や想像力を育て、文化を発展させていこうとする意欲を育てることにつながります。

 

Author Profile

井上 幸一
井上 幸一
2001年 持続可能な循環型建築社会の創造を目指し古材FC事業を立ち上げ全国展開を開始する。
古材の利活用から古民家を地域の宝と捉え古民家の利活用をおこなうための事業として古民家ネットワークを創設。
「古民家鑑定士」「伝統再築士」を始めとする資格を創設し全国各地で古民家を取り扱う人材育成に力を入れ、古民家鑑定士は全国に1万人を超す。

現在は、古民家の安心と安全を担保するために基準を創り、ソフト面とハード面を兼ね備え全国各地で講演活動を実施している。

また本年、「内閣官房歴史的資源を活用した観光のまちづくり専門家会議専門員」として全国各地の地方自治体のコンサルティング活動も行う。

古民家ツーリズム推進協議会事務局長として、全国で古民家ツーリズムの推進もおこなっている。

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