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持続可能な社会を目指すサスティナブルの時代、3(最終回)

古民家再生や移築をして建設をするのは、覚悟がいることです。
でもサスティナブルデザインとして、一部に古材を活かした住まいを求めようと思えば、
決して難しくはありません。

実際に流通している古材のデータを確認すると、
古材がどのようなものかが理解できます。
たとえば1棟の古民家からどれくらいの古材が取れるのかというと、
実は7割は10本以下しか採取されていません。
まったく古材が取れない古民家も5%ほどありますが、
実は20本以上取れる古民家の方が、まったく取れない古民家の数よりも少ないのが現状です。(2012年度300棟内)

古民家として残っていれば、豊富に古材が取れるわけではありません。
あたりまえのことですが、再利用できるだけの品質が求められます。

これだけでも、古材がそれなりに価値のあるものであることが理解できると思います。
そして取られた古材の約半数は、小屋組みなどで使われていた丸太の梁です。
さらに角材を合わせると、梁材が全体の8割となります。
柱よりも梁の方が傷みにくく、さらに再利用する際にも使いやすいので流通されています。
(2012年度2000本内)

では古材にはどのような樹種の材が多いのでしょうか。そんな興味も湧いてきます。

流通している古材の6割以上がマツ材です。
曲げることに強いので、古くから梁によく使われていました。
日本の中でも地域によっての違いがありますが、今でも本州西部では地マツが人気の材です。
他にはスギ材やヒノキ材などの日本を代表する針葉樹があります。

広葉樹の中ではケヤキ材が約1割あります。
丈夫で美しさのあるケヤキは、大黒柱に使われていることが多い材です。

新しく目的のために製材された木材とは違い、
1本1本が全く違う個性を持った古材を、
新築やリフォームの中でどのように生かしたら良いのでしょうか。
実際に使われている事例の中では、約半数が構造材として活用されています。
前述の法隆寺のヒノキ材の強度が、伐採後200年にピークを迎えるように、
十分構造材としても利用できるものです。

A(18)のコピー

その他の用途では造作材や化粧材として使われるものがほとんどです。
家具として造りなおされているものはわずかです。
わざわざ古材の良さを見出して使っている人たちは、
古材を実際に目に触れて楽しみながら使っているということです。
新しい空間に住み始めても、こだわって使用した古材のおかげで、
どこか懐かしさと安定感を感じさせてくれる住まいになっています。

貴重な存在でもある古材は、60~120年の材が最も価格が高い値段で取引されています。
もちろん大きな材や大国柱などは高くなります。
さらに煤色や建設時の仕上げ削りの跡など、景色の刻まれた材も価値が上がります。

こうした価値の高い古材を豊富に使い、
再生や移築を検討すると大変な金額になってしまいますが、
一部に利用するのであれば手が届かないものではありません。
一般的な新しい木材の価格は
材・質・産地によって大きく価格も違うので比較することは難しいことですが、
見せられるレベルの国産材と比べれば、数倍の範囲内といえます。
実際の価格も流通を調べてみれば、
1本5万円~15万円の範囲でもたくさん見つけることができます。
大手メーカーでは保証を言い訳にし
て、
定められた部品しか使うことができない企業もありますが、
地域に根ざした企業では、それなりに対応を検討してくれます。
もともと住宅はさまざまな部材を、現場で組み合わせてつくり上げるものです。
しっかりとした職人さんの技術があれば、難しいことではありません。
アフターサービスや将来のメンテナンスを考えても、
さまざまな対応力があることは大事なことです。

そして何よりも、古材を使ってみることは
世界的なトレンドであるサスティナブルデザインを取り入れることです。
歴史や伝統・文化を大切にして、
古いものに価値を見出すライフスタイルを実践することでもあります。
まだ子どもが小さい若い世代にも、このライフスタイルは広がりつつあります。

デザインが家の価値として十分に認められているアメリカでは、
偽物でもサスティナブルデザインは憧れなのです。
木造の歴史と伝統を持つ日本では、先人達が残してくれた本物の古材があります。
古材を宝にできる国であることを、心から味わえたら素敵ではないでしょうか。

※本文書は一般社団法人 住まい文化研究会「おうちの話」より引用

Author Profile

井上 幸一
井上 幸一
2001年 持続可能な循環型建築社会の創造を目指し古材FC事業を立ち上げ全国展開を開始する。
古材の利活用から古民家を地域の宝と捉え古民家の利活用をおこなうための事業として古民家ネットワークを創設。
「古民家鑑定士」「伝統再築士」を始めとする資格を創設し全国各地で古民家を取り扱う人材育成に力を入れ、古民家鑑定士は全国に1万人を超す。

現在は、古民家の安心と安全を担保するために基準を創り、ソフト面とハード面を兼ね備え全国各地で講演活動を実施している。

また本年、「内閣官房歴史的資源を活用した観光のまちづくり専門家会議専門員」として全国各地の地方自治体のコンサルティング活動も行う。

古民家ツーリズム推進協議会事務局長として、全国で古民家ツーリズムの推進もおこなっている。